「戦略会計」ということばは、共通の理解をもって定着していることばではないかもしれません。海外ではK. シモンズが1981年に"Strategic Management Accounting"という概念を提唱し、以来我が国でも、「戦略管理会計」或いは「戦略的管理会計」などといった著述がみられるようになりました。当社の「戦略会計サービス」の名称や内容もこれら著作から多くのヒントは得ていますが、必ずしも全く同じ意味であるとは限りません。当社は、「戦略の実行のために真に役に立つ管理会計の手法の体系」という意味合いでこのことばを用いています。
それでは、「真に役に立つ」管理会計とは何を意味しているのでしょうか?当社は、管理会計が「真に役に立つ」条件として以下の二つの点を掲げます。
1.意思決定のために有用な情報を提供するものであること
2.組織を望ましい方向に導くものであること
上記1、2のいずれも望ましいこととそうでないことを判断する基準があることが前提で、それを具体化したものが企業のミッション・バリュー・ビジョンであり、また、これらを実現するために企業がたどるべき道筋を示した「戦略」であると考えられます。これらの企業のミッションや戦略は、千差万別であって然るべきものですが、すべての企業が共通して追求すべき課題もあります。それは企業価値の長期的な拡大を図ることで、それこそが管理会計が扱う領域です。言い換えると、ある意思決定が企業価値の向上に貢献するか否かの判断を可能にし、そして企業価値の向上に向けて組織を導いていくことが「真に役に立つ」管理会計に求められる最大の使命であると考えているのです。
企業の財務的な究極の目標が、企業価値を長期的に向上させることがであるという理解は、いまやグローバルスタンダードとなっているといってよいでしょう。我が国でも経営者の方々が企業価値の向上に言及されるのをしばしば耳にしますし、東京証券取引所では2012年から優れた企業価値経営の普及・促進をはかるため、「企業価値向上表彰」を実施しています。2013年の「企業価値向上表彰」においては、丸紅株式会社が大賞を受賞、他にもキリンホールディングス株式会社など錚々たる優良企業が受賞或いはノミネートされています。とはいえ、実務として企業価値経営を具体的にどのように実践すればよいか戸惑われる向きもまだまだあるのではないかと思います。私たちは、グローバルに通用する、そして市場から評価される企業価値経営実践のための管理会計の導入のお手伝いをいたします。
当社は「企業価値」ということばを、M&A時の買収価格の検討などにおいて利用される企業価値評価の手法であるDCF法と同様の意味、すなわち将来のキャッシュフローの現在価値といった意味で用いています。当社のアプローチでは、まず、企業の現在の企業価値がどのような源泉からもたらされているかバリュードライバーを分析・体系化した上で、将来にむけてこれを向上させるための計画に落とし込み、実績の測定・評価を行ってゆく仕組みを導入します。企業価値の評価尺度としては、スターンスチュアート社の開発したEVA®が代表的です。当社も独自のフレーバーを加えてはいますが、同様の利益概念や考え方を採用します。
バランスト・スコアカード(BSC)は企業の戦略実行力をアップさせる強力なマネジメントシステムです。アメリカのR.キャプランとD.ノートンが最初にBSCを提唱したのは1990年代初頭、それが日本に本格的に紹介されたのがおそらく2000年前後だと思います。以降, 我が国においても確実に定着しているという評価もある一方で、すっかり衰退してしまったという見方もあるようです。このような両極端の評価があるのは、多くの流行ものの経営手法同様、当初のもてはやされぶりと比べると鳴りを潜めている感は否めないものの、BSCの思想やアプローチそれ自体は、戦略の確かな実行を支援するスタンダードツールとして根強く支持され、名称や細部の異同はあっても、定着しつつあるのだろうと理解しています。 いずれにせよ我が国では、まだまだ普及の度合いが低いのが実情でしょうが、ホンモノのツールとして再び脚光を浴びることになることは間違いないでしょう。
BSC導入プロジェクトの根幹は、 1.「戦略マップ」で企業の戦略を描画し、一連の戦略目標群とこれらの相互の関係を明らかにすること、 2.これらの目標の実現度合を測定するための指標と目標値を設定する(「(狭義の)BSC」の作成)こと から成り立っています。
当社はBSC導入プロジェクトの目的を複数の指標からなる計数資料、或いはダッシュボード的なものを作成することにとどたりはしません。むしろ、BSCの導入によってもたらされる望ましい思考様式や行動様式が企業の中に定着するようサポートすることを重視しています。 見た目より本質重視の地道な取り組みと考えているのです。
調査・計画段階:
経営者や担当者の方との面談や資料の詳細の調査経て、具体的なスコープや成果物の要件定義、タイムライン、メンバーなどプロジェクトの詳細について合意します。
前提段階:
戦略のベースとなる企業のミッション、バリュー、ビジョンについて経営陣とディスカッションし認識を一致させます。
プロジェクト実行段階:
「戦略マップ」と「(狭義の)BSC」の構築を行います。この段階では、各企業の皆様が主役です。当社は事前のトレーニング、ツールを提供した上で皆様の活動をあらゆる側面からサポートします。
ローンチ後の段階:
BSCプロジェクトは所定の成果物を完成させて終了というものではなく、それが真に効果を発揮させるためには、マネジメントサイクルに組み込み、思考様式・行動様式のなかにしっかりと定着させることが大切です。ローンチ後は、指標の収集やそれを使った資料作成・社内コミュニケーション・会議の運営、環境変化に合わせたメンテナンス等をサポートします。
BSCでは戦略マップを描く際や各指標を選択分類する際、「財務の視点」「顧客の視点」「内部プロセスの視点」及び「学習と成長の視点」の4つの視点から分類、整理します。この4つの分類は極めて考え抜かれたものですので、多くの場合、これに追加する必要はありませんし、どれか一部を省略することはありません。
財務の視点
BSCのフレームワークの中では最上位に位置します。企業の究極の目標が利益或いはキャッシュフロー等財務上の数値の追求であるというつもりはありませんが、財務上相応の成果を挙げることは企業が存続し、投資家の期待に報いる上で必須です。当社の推奨するBSCでは、長期的な企業価値の向上を最上位の目標に設定します。これによって企業の目指すゴールが明らかになります。
顧客の視点
企業価値は、別の言い方をすれば将来のキャッシュフローの現在価値ですが、キャッシュフローは外部の顧客に対して提供する価値の対価としてもたらされます。どのような事業ドメインで、どのようなビジネスモデルを用いて、どの商品・サービスで、どの顧客をターゲットとして価値を提供するのか、そしてライバルたちとどこで差別化を図るのか。こうしたことは戦略を描くことそのものです。顧客に対して提供する価値を定義し、目標とするキャッシュの流入を実現するストーリーラインを描き、クリティカルな重点課題と施策等を具体化するセクションです。ゴールに向かうための道筋のアウトラインを明らかにします。
内部プロセスの視点
顧客に提供する価値を創造するために必要な設備、資源は何でしょうか。どのようにして、それらを調達し、顧客に提供する価値へ変換してゆくのでしょうか。ゴールに向かって進む道筋の詳細を設計し、企業の有するリソース、エネルギーを最も効果的・効率的に顧客に対する価値に転化するプロセスを具体化するセクションです。
学習と成長の視点
これから歩んでいく道の途上で必要になるリソースはそろっているでしょうか。人材、情報、組織等の現状を見直し、不足があれば内部で育成するにせよ外部から取り入れるにせよ必要なレベルまで引き上げることが必要です。
BSCは全社的に導入するのが効果的ですが、当初から全面展開することがプロジェクト推進上得策であるとは限りません。BSCを導入する単位は、製品・サービスや顧客の違い等をベースに区分されたSBU(Strategic Business Unit)とするのが一般的で、1SBUにつき1つの戦略マップと1つのスコアカードを作成するのが基本でしょう。そしてSBU単位から、SBU内の下方向への展開(部、課・チーム、個人レベル)或いは横方向への展開(他のSBU、複数SBUにサービスを提供するシェアードサービス部門)、上方向への展開(全SBUやサービス部門の全社レベルでの統合)と拡張してゆくことが多くの場合現実的です。
BSCのプロジェクトにおいては、戦略マップ・或いはスコアカードの完成が旅の終わりを意味するわけではありません。ある意味それはスタートにすぎません。BSCを導入した場合でも、PDCAを基本とするマネジメントサイクルに変わりはありません。すなわち、策定された計画に基づき施策を実行、測定された指標との乖離を把握して善後策を練る。さらには、課題・諸施策の見直しにつなげるというサイクルを回してゆくことになるでしょう。ただし、BSCを組み入れたマネジメントサイクルにおいては、必要に応じて戦略それ自体や上位の目標も見直しの対象とするダブルループサイクルとなります。いずれにせよBSCは、マネジメントサイクルに組み込まれ、企業の組織の隅々にまで浸透させることができてはじめて真価を発揮します。 それ故、BSCのローンチ後に発生する様々な課題、例えばデータの収集、分析・解釈や諸会議・社内コミュニケーション、業績評価等に結果を利用したり、指標・目標値の妥当性を検証したりといったことに上手く対応することがプロジェクト成功の鍵となります。このため、あらかじめこれらローンチ後の課題への対応もプロジェクトのスコープに加えておくべきでしょう。
ABC、脱予算経営、TOC等の先進的な手法から予算管理、損益分岐点分析などの伝統的な手法まで、企業価値経営の実践、戦略目標の実現に向けた課題解決を最適な手法で処方します。
伝統的な原価計算手法ではみえてこなかった真の原価の姿がABC/ABMという手法によって見えるようになります。製品やサービスの種類別、あるいは顧客別のキャッシュフロー創出能力を把握し、課題の発見・解決を行う際に効果的なツールです。
E.ゴールドラットの提唱する非常に明快で応用範囲の広い理論です。原材料等の調達から生産、顧客に対する製品・サービスの提供に至る一連のプロセスの中で、キャッシュフロー創出の制約となっている箇所に焦点をあて、課題の発見・解決を行う際に効果的なツールです。
予算は管理会計の手法として有効性が高く定着しているものです。しかし、従来の予算のやり方では、労力・時間がかかりすぎる、変化に対応できない、各部署が部分最適に走り全体最適がはかれない、ゲーミングがはびこる等の弊害が指摘されることがあります。これらの弊害から脱却するため、予算にかわる新しい管理手法のフレームワーク枠組を模索する流れがあります。相対的な業績目標の採用、ローリング予測の実施、徹底した分権化等をすすめてゆきます。